vol.05 ふたりの記念日

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大学のサークルで知り合った彼は、1つ年上の先輩。関西出身でノリがよく、みんなに愛される芸人キャラだ。九州出身のおっとり屋のわたしはそのノリになかなかついていけず、オモロいことのひとつも言えない自分が時々うらめしくなる。
「こんな冴えないわたしのどこがいいんだろう……」と直接聞いてみたいけれど、そんな勇気もなく、ただただ彼のツッコミを天然のボケで返す日々を送っている。

付き合い始めて、今日は2ヶ月記念日。「お祝いにごはんでも食べに行こうか?」と誘ってくれたのに、「いや、わたしがごはん作る」と大見得を切ってしまった。
「えー! マジで!? じゃあ、今日はバイト終わったらソッコー帰ってくるよ」とニコニコしながら、アパートのカギを渡してくれた。
恋愛ドラマのまねごとをしてみたくて、つい口から出てしまったウソ。料理なんてカレーと目玉焼きくらいしか作れないというのに。

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でも、もう迷っている時間はない。半泣き顔で向かった先は、なじみのお総菜屋さん。店のおばちゃんに事情を話すと、「まったくしょうがないね〜次からは自分で作るんだよ」と言って、肉じゃがとほうれん草の胡麻和えを少し多めにサービスしてくれた。
あとはお味噌汁と干物があれば完璧だ。干物は故郷の母が送ってくれたアジ。脂のノリがよく、何もつけずにそのままで充分美味しいから、きっと彼も気に入ってくれるはず。

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テーブルに料理を盛った器を向かい合わせに並べ置き、彼の帰りを待つ。嬉しさ半分、やましさ半分。彼に「また作ってね」って言われたら、お惣菜屋さんでバイトしよっと!

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