vol.04 妻恋し独り飯

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長女の小学校入学と同時に家を建て、今年8年目の春を迎えた。小さな背中に赤いランドルを背負っていた娘も、来春には高校を受験する中学3年生だ。父親のわたしにはただただ背丈が伸びた程度にしか思えないのだが、思春期という厄介な年頃のせいで、近頃わたしとは目も合わせてくれない。男親としてはもはや「消費期限切れ」の身になったことを感じる今日この頃である。

静岡に単身赴任となって丸2年。結婚するまで実家暮らしだったため、40すぎまで自炊経験はゼロ。米の研ぎ方も、卵の割り方も幼稚園児レベルだった。
赴任当初は外食やお弁当に頼っていたが、定期検診でメタボと診断されてからは、「できるだけ自炊するように」と、妻が食料品を詰めた小包を送ってくるようになった。
米に乾麺、缶詰、インスタント食品に混じって、ある日クール便で届いたのが長崎魚の干物セット。カマスの一夜干しにアジ、サバ、サワラとバラエティに富んだ魚が箱いっぱいに入っていて、思わずお腹がグーと鳴った。

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「よ〜し、今夜はこれで一杯やるか」。

さっそく台所に立ち、まずはカマスを魚焼きグリルへ。ビールと冷や奴をテーブルに並べ、あとは焼き上がるのを待つのみ。妻の差し入れのおかげで食卓は豪華になったが、残念ながら独りめしの寂しさは変わらない。
毎晩、家族のために食事を用意してくれていた妻に、俺はねぎらいのひと言でも伝えたことがあっただろうか。干物があまりに美味くて、つい本音を妻にLINEした。
「干物ウマカッタ。だが、独りめしは味気ない。お前の手料理が恋しいと思う♡  孝之」。

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